凍夜の暁
目が覚めると、自分を包む腕があった。
闇主だ。
逃亡中の自分の側にいるのが彼だからだとか、他に誰もいないからだとか、そういう理屈めいた理由はあとからやってきた。
この腕は闇主だと、ただ、そう感じ取った。
感じ取れた自分が何故だか嬉しかった。
一緒にいる。
それが自然だと感じていることが泣きたくなるくらいの安堵をもたらした。
視線を草原に向ける。
暗かった空が、ゆっくりとその色を紫に変え、地平に近づくごとその色を淡くしていく。
明日が、くる。
夜明けがくる。
また旅立ちのときが。
だけど一人ではない。
必ず傍にいてくれる。
信頼とか依存とか--実際はそんなものはもうどうでもいいのだ。
一緒にいたい。
ただ、それだけだということにどうして気づかなかったんだろう?
また再び彼が姿を消したなら。
自分はきっとまた捜す。たとえ、魂だけになっても。
捜して捜して--いつか狂ってしまっても。
この傍らのぬくもりを、もう手放すことなど出来ないから。
空の紫が明るさを帯び、天頂の藍が青さを増す。
地平の紫暗が赤明を増す。
夜明けが近づいてきた。
朝が来る。
そして、旅立つときが。
それは決して楽しいものではないけれど……だけど、一人じゃない。
共に在る。共に居る。
夜は怖かった。
誰もいないから。
朝は嫌だった。
誰もいないから。
だけど、今は違うから。
共に居る存在が在るから。
だから--言うのだ。
「朝だ、闇主。--行こう」
草原に広がる曙光。
冷気が溜まり、葉に宿った露が輝きを放つ。
それはいつもの朝。
変わりのない朝。
繰り返される朝。
そして、二人は旅立つのだ。
誘い、寄りそうようにして。
終わりのない明日を迎えに、果てない明日へと向けて--。
ということで、上月さんから、「凍夜」のラス様バージョンを頂きました(*^-^*)
もうもう、ラスさまの闇主さんへの思いがもうもうひしひしっと伝わってきますv!
個人的には、朝の風景を詩的に表現されてるのがすっごく綺麗で素敵ですv
上月さん、本当に有難うございましたm(__)m
後記担当 ちな
闇主さんバージョンはこちら→「凍夜」
上月さんのサイトへはこちら→「Out of STOPPER」
背景素材提供「Fin*」様