☆上月様作秘書様突発SS集+落書き担当 ちな
  上月さんにおねだりして書いてもらいました秘書様SSですv
  代わりに、落書き秘書様イラストを描いてます・・・・。でも、こーちゃんのSSが読めるならと
  頑張りましたvこーちゃん、本当に素敵な秘書様SS有難うございますvv大好きです(*^-^*)

☆秘書様と社長さん。(後編)
ほどなく彼女の指がとまり、ぱたり、とパソコンが閉じられる。接続を解除した携帯と一緒に鞄にしまいこむと、彼女は思いだしたように今やすっかり冷めてしまったラテに手を伸ばした。
「…おっと」
 ラテを掴む前に、その手が青年の手によって捕まれる。
「なっ…」
「そんな冷めちまったのを飲むんじゃない。…そうだ、どうせおまえ昼はまだだろう? 馳走してやるからつきあえ」
 言うなり、美貌の敏腕社長は返答も待たずに歩き出す。
「な、社…闇主!」
 慌てて荷物をまとめて追いかけると、カフェの入り口で待っていた青年は、ニヤリと口元をゆがめてみせた。
「似合ってるじゃないか、そのスーツ…流石は俺の見立てだな」
 視線が丁度足下に来ているのを感じ取って、彼女は心持ち赤くなりながら鞄でひざ上あたりを隠した。
「…スカートの丈が短すぎる。せめて膝ぐらいまでは…」
「何をぶつくさ言ってるんだ。行くぞ」
 ラエスリールの反論は赤くなりながらではあまりに可憐で説得するには迫力があまりに欠けており、社内外にそのワンマンぶりを知らしめている青年にはまったく痛くもかゆくもないのだろう。無防備になった背に手を回し、その華奢な腰を軽く抱くとさっさとタクシー乗り場へと歩き出す。
 仕方がなしに一緒に歩きながら…今日も替え玉にされるのであろうこの社長の親戚の黒髪の青年と砂色の髪の先輩秘書へ、ラエスリールはこっそりと心の中で謝るのだった。
☆秘書様と社長さん。(前編)

カタカタと軽快な音をさせながら、細い指がキーボードの上で踊る。
 ディスプレイに整列する文字を、細いフレームの眼鏡に映しながら、色違いの瞳は資料とディスプレイを往復する。
 淹れてもらったラテは少し冷めてしまったようだ。立ち昇る湯気がかげろうのように儚くなってしまっている。
 しかし彼女はそんなことには全く意識を向けず、仕事の手を休めることはない。
 カタカタカタ、と机にのせてある携帯電話が音を立てて震えた。呼び出し音ならワンコールの間で応答ボタンを押す。
「はい、ラエスリールです」
 雇い主からは「このご時世危ないことだらけなんだから携帯では相手がどこのどいつか判るまでは名乗るな」と繰り返し言われているが、律義な彼女には 不作法に思えてついつい名乗ってしまう。
「…ええ、明日ですね…その案件の報告なら15分程度で充分だと伺っていますので…14時15分からの15分間でアポを入れておきます。…はい、社長室で。……はい、判りました。よろしくお願いいたします」
 片手でキーボードを操作して画面に映しだされるスケジュールを確認しながら丁寧な口調で応えて通話を終えると、その携帯電話をパソコンに繋いで今度はメールソフトを立ち上げた。
 再びキーボードの上で指が踊る。
 簡潔に用件を記入して送信ボタンをクリックした。
 メールが無事送信済みトレイに格納されたのを確認してから、ふう、と小さく吐息をもらすと両手を組んで軽く伸びをする。
「これでやっと一段落か…」
「ごくろうさん」
 独り言に応えるタイミングで声をかけられて吃驚して振り返った。
「社長!?」
「社外じゃ名前で呼べと言ってるだろう?…メールの件は了解した」
「社外と言ってもココはビル内だし……わかりました、確定スケジュールとして社内ネットワークにアップしておきます」
 当然のように向かいに座る青年の言葉に僅かに眉を寄せてから、再び視線をディスプレイに向けてキーボードに指を滑らせる。
 青年は彼女の仕事ぶりを満足したように見遣った。

              ((つづく/笑))
☆残業時の日課。
時計の針はとうに定時を超えていた。
 しかし、まだ仕事は終わりそうにない。
 仕方がなくラエスリールはビルの1階にあるカフェで軽く食べることにした。
 コーヒーを傍らに、とりあえず、とモバイルのパソコンを立ち上げる。
(まったく…)
 放蕩社長の秘書になんてなるもんじゃない。予定外の行動が多すぎる。こっちが必死に作ったタイムスケジュールを何だと思ってるんだろう。
 おかげで、今日も残業だ。
 モバイルパソコンを慣れたように片手で操作しながら、ぱくり、とドーナツにかじりついた。
 ディスプレイに表示された内容に、よし!、と大きく頷く。

《阪神-巨人 7回表 3-1》

「さあもう一頑張りするか!」
 ドーナツを平らげコーヒーをビールのように一気飲みすると、気合を入れるように、ばたんとパソコンを閉じる。
 縦じまのスーツを着こなした美人秘書は颯爽とカフェから立ち去っていった