今宵、君に惑う



愛しい人のたくましい腕の中、私は瞳を閉じて……。
自分にとって絶対無比の存在が、側にいることを何よりも幸せに感じていた。

* * * * * * * * * * * * *


彼の甘い吐息が耳元を掠めた。
狂おしいというのはこういうことをいうのだろうか。
心地ち良くてどうにかなってしまいそうな……。
「あん……しゅ……。」
気付くと、無意識に彼の名前を呼んでいた。
名前を呼ぶだけで安心する自分に驚く。
けれど……その気持ちとは裏腹に、
恐ろしく不安を掻き立てられたりすることもよくある。
彼に流れる時間と私に流れる時間が余りにも違いすぎてひどく苦しいのだ。
「ラス・・………・…。」
私の呼び声に応えるように彼の腕が、私を力強く抱き締める。
草原の褥の上で互いに腕を伸ばして寄り添う。
やがて静かに風が吹いた。
私たちを急かすように。
この風が二人を隠してくれたら良いのに……。
胸の中、小さな願いが芽生えた。
言葉で上手く表わせないけれど、彼が愛しくて
愛しすぎて壊れてしまいそうだった。
私は必死で彼にしがみついた。
衣服に爪が食い込むほど……激しく。
私が腕に力を込めるほどに、抱き締める
腕の力も一層強くなった。
「ラス」
小さく私の名を呟いた後、彼は私の顎を
そっと持ち上げ、自らの唇を重ねた。
吐息が溶け合い、一瞬気が遠くなる。
がくりと傾いだ私を彼が受けとめてくれた。
首筋に彼の唇が降りてくる。
どこか気恥ずかしさを感じても、不思議と嫌な気はしない。
私を抱き締めるしなやかな腕も、広い背中も
全てが彼そのもので、どうしようもなく嬉しかった。
何かを見透かすような深い眼差しに捕らえられ、
私も知らずの内にこの瞳で彼を捕らえて、離れられなくなっていた。
これはこの上ない罪。
痛みと恍惚をもたらす最高の罪だ。

このまま瞳を開かなければ、きっとこの刹那が永遠になる。
同じ時間を分かち合える。
彼……闇主と一緒に。
現実に背を向けることはできないけれど、今だけは
短い一瞬を抱き締めていたい。
世界一わがままで微かな願いが、どうか叶いますよう・……。
恋という気持ちをくれた彼に感謝しながら、私は祈りを込めた。


ということで、麻弥様から頂いたSSですv
闇主さんを思うラス様vしかも、自覚してます(ポイント)!もうもう、画面の前で
にまにまが止まりませんvやっぱり破妖っていいなーと思う作品でしたvv
まややちゃん、とってもラスさま乙女なSSを有難うございましたm(__)m

後記担当 ちな

背景素材提供「月時館」様