ふとした拍子に目を覚ます

となりに深紅を捜しては―――――いないことに,恐怖を憶える

そして。




君のトナリ




「闇主・・・・?」
琥珀と深紅を左右の瞳にもつ、少しきつめの顔立ちの美女が、目を覚ます。







唐突に、目が覚めた。
闇主の姿は見あたらない。
きょろきょろと見回すと、古小屋のような風体である。
窓の外はまだ真っ暗で、どうやらまだ夜のようだ。
そうこうしてるうち、少しづつ、頭も働いてくる。
そうだ、確か・・・・・・追手におわれて、戦って。
あと1体、という時に闇主が荒々しく舌打ちをして、闇にとけて。
地上に出たと思ったら今夜はここにいろ、と言いおいて、闇主だけ、また闇の中に戻ったのだ。
しかし、ここに来た時は、腕に傷を負っていた気がしたのだが?
今は痛みを感じない上に、月の光にあて自らの腕を見下ろすと、うっすら痕がついているだけだった。
とは言ってもぱっと見では分からないくらいに薄くなっていたけれど。
と、そこまで思って気付く。
結界がいつもと違う。
なんだか優しい感じの・・・・癒しの力を感じる。
きっと闇主は、追手に気付かれないように....その場で治したのでは追っ手に場所を気取られると思って、ゆっくりと、気取られぬよう結界の力によって・・・・癒す方を選んだのだろう。
とはいえ、、これは仮説であるのだが。
まだ寝ていようか。
まだ朝は遠いのだろう。物音一つしない。
いや、防音の効果もある結界を張ってくれたのだろうか。
自分が物音によって目覚めないように。
「きっと、そうなのだろうな....」
つぶやく。
彼にここまで気遣われていた自分。
それに気付かなかった愚かな自分。
自分には何の力もないのに。
・・・・いや、あるのに任意で使えない、と言うべきなのだろうか?
どちらにしても、役立たずであることには変わりなくて。
だのに、となりに深紅がないと不安になって。
最低だ、と思う。
何一つ、自分では出来ないのに、彼を、求めている。
魔性の王。
かつて柘榴の君、と呼ばれていた彼。
自分のために城を壊して。
自分の右腕とすら思えた配下をも、闇に葬り去って。
全て、自分のために・・・・。
そのくせ優しくて、傲慢で、わがままで、気まぐれで・・・・でもやっぱり、優しくて。
自分はこんななも役立たずだというのに。
となりに、彼を求めているだけでいい立場では、けしてないというに。
見放されたと、しても。
それは・・・・・・仕方が無いこと。自分は誰より『自由』であったかれの、足かせでしかないのだから。
それは分かっている――――でも。
見放されてもしかたないと、分かっていても。
もし明日、目覚めた時に彼がいなかったら?
明後日も明々後日も......ここに、戻ってきてくれなかったら.....?
怖くてたまらない。
君のとなりに、いることだけを願う。
居られる事だけを、願ってしまって、いる。
最低だと、自己嫌悪しながらも。
彼を求めて・・・・・・・・・・・。






また、眠気に襲われる。


目の前に、紅い闇が広がる。















くつりと、もらされた声ゆえに 空気が震える。

闇が、うごめく。

闇が、形をとる。

そこには人にはありえない美貌の主。

深紅の闇を従わせる、魔性の王、であったものの形の良い唇が僅かに・・・・動く。









そして、口にする。

あの日した、彼女との、約束の、言葉を。











少女は眠る。
そして、夢を・・・見る。
深紅の闇の主と、約束した日のことを。



「ずっと傍にいてやるよ」と。

それは彼女の夢のコトバか、現の声か――――――?










『傍にいてほしい』

『傍にいたい』

『君の、トナリにいたい』

そう、願うことの意味を。

彼を、求めることの意味を。

彼女は、知らない。

まだ、知らない。






ということで、緋貴様から頂いた小説ですvラスさまの闇主さんに傍にいて欲しい、傍にいたいという
思いがひしひしっと伝わってきました(><) そして、ラスさまを気遣う闇主さんv癒すための優しい場所☆
そして、それがどういうことなのか、未だ知らないラス様。色々と妄想しちゃいましたv
緋貴さん、本当に素敵な小説有り難うございましたm(__)m



後記担当 ちな


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