Temptation of holy love on day



「もう起きないと学校に遅刻するぞ?」
「うん・・わかった」
大きなべッドの存在感が強い部屋で身支度をする青年の声に、少女がぼぉっとした瞳を向ける。寝起きの瞳は普段より幼い印象なのに、真っ白な肌のあちこちに残った紅い痕が艶かしい。何も身につけていない無防備そのものの姿は息をのむほど綺麗で、何度見ても飽きない。
「いつまでもそんな格好じゃ風邪ひくぞ」
冷静を装った言葉に、少女は軽く頷いた。そして彼女のすぐ横でクシャクシャになっている布の塊を羽織る。だが、まだ眠気が引かないらしく表情は先程と変わらず、身支度を始める様子もない。

 昨夜、急な大降りで目の前にあった建物に緊急避難した。それはホテルだった。ただしある目的に特化された。今までホテルを利用する時は、いつも闇主が一流ホテルを選んでいたので、この類のホテルに入るのは初めてだった。そして雨宿りのつもりだったのが・・・・結局泊まる羽目になった。勿論闇主の責任で(笑)
「ラス・・・本当にそろそろ支度しないとやばいぞ?」
ほとんど身支度を終えた闇主が、ジャケットを掴みつつ再び声をかける。基本的に昨日と同じスーツ姿だが、シャツが違う。闇主は普段黒いシャツを着ているのだが、昨日雨に降られる前、偶然シャツを買っていたのでそれを着ていた。そのシャツは、彼には珍しい(ラスが選んだからだと思われる)真っ白なシャツだった。
「・・カッコいい・・」
「は?」
唐突すぎる彼女の言葉に、青年の瞳がクエスチョンマークに変わる。勿論、カッコいいと言われたことに驚いている訳ではない。そんなことは今まで100万回以上言われて慣れてるし、第一、毎朝鏡を見れば明白な事実である。が、言った人物が問題だ。なんせ口下手で照れ屋な彼女はその類の言葉を今までほとんど口にしたことがなかったのだ。
「いつもの黒も似合うけど・・・真っ白なシャツも凄くカッコいい・・」
うっとりとした声音に目を向ければ、そこには相変わらずベッドに座り込んだままの彼女がいた。ただし先ほどとは違い、薄ピンク地の浴衣を羽織っている。ここのホテルに、ガウン替わりに置かれていたものだ。浴衣は、この手のホテルの割に良いもののようで綺麗な花柄が散っている。それ自体は何の問題もない。ノープロである。だが、浴衣には帯が締められておらず、しかも彼女は下着をつけないまま羽織ってペタンと座り込んでいるのだ。

 朝日に微かに透ける肌・・・そしてチラリと覗く胸の谷間・・・・・

 古き日本の伝統――――-チラリズム。その威力の凄まじさを今、闇主は心底痛感した。ついでに前屈みになりそうになるが鉄の意思で抑える。なんせあと2時間弱で授業が始まるのだから・・・・
「いい加減に支度しろ」
「わかった・・」
これ以上今の彼女の姿を見て暴走する前に、闇主は化粧室の方に撤退した。

「・・・・・・・・・・」
数分後、化粧室から戻った闇主は今度こそ言葉を失った。
ラエスリールは着替えていた。ただし、それは本来今彼女が着るべき服装――学生服ではない。まぁこれも制服には違いない。やたら丈が短いアンナミラーズ風ワンピース(=*知らない方はNETで検索してクダサイ*)でスカート部分にフリフリの真っ白なエプロンが付いていて、しかもナゼかチャックが前に付いている・・・。
「何でこんなの着てるんだ?」
殺人的な可愛らしさ☆に鼻の奥がツーンとくるが、鼻血を吹き出すような真似はプライドが赦さない。なんとかクールなイイ男の体面を守り通して、平静に(聞こえる声で)問いかけた。
「クローゼットにあったから」
どうやらこの服装もサービスの一環らしい。ただし、この種のホテル独特のサービスと言えるが。
答える声はまだぼぉっとしている。カナリ寝惚けているようだ。それとも昨夜の激しい・・・・(教育的削除)・・・・・・のせいで。
「真っ白で糊が効いたシャツって、凛としてて凄くカッコいい・・・」
半ば朦朧としたような声で囁いて、凄まじく可愛らしい格好で闇主に近づく。そして雪細工のような繊手でそっと闇主のシャツの襟元に触れる。
「何だか・・・・触りたくなる・・・」

ぶちっ!ぶちぃぃぃ!!

 闇主は何かが自分のこめかみで切れる音を効いた。ふと目に入ったカレンダーを見れば、今日は2月14日だった。言わずと知れた聖なる愛の日である。だから今日は教師の義務もへったくれも忘れてイイ日なのだ。教育委員会が何と言おうと、彼女の弟と父親が何を叫ぼうと今彼はそう決めた。


* *後書き**

久々のギャグテイストですvオフラインの親友と「いつもの彼とは違うスーツ姿・及びその効能」について熱く語った後、ちなさんとのメッセでも色々熱く語って、それらの会話から出来た話です(笑)



と、いうことで、千尋さまから頂いたどっきりちょっぴりオトナな萌えSSですーv
読ませて頂いた瞬間画面の前で大爆笑してしまいました(ごめんなさ;)。
ちひちゃんからその話題を振られ、白シャツに大いに食いつき(笑)、その後はもう
とっても楽しい一時でした(にこ) そんなちひちゃんが だ い す き ですよっ!
またメッセでお話してください(*^-^*)
ではでは、素晴らしい萌えSS有難うございました〜vv

後記担当 ちな


背景素材提供「700km」様